発達障害や不登校の親の会を10年ほどやっているご縁で、
たまに寄稿のご依頼があり、載せていただいています。
今月号のひだまりニュースに掲載していただきましたので、こちらにも載せさせていただきます。
「発達障害児の子育て 親の会と共に歩んだ10年」
こんにちは。「あんだんて(前:発達障がい児の子育て会あんだんて)」の日置です。
私は2013年から、発達障害児の保護者の会を運営しています。きっかけは長男が発達障害と診断されたことでした。
障害との付き合い方、対応の仕方、右も左もわからず、ただ「将来は大丈夫なんだろうか?」という不安の中、情報を集めるのに必死でした。当時の私は、「発達障害を治そう!治せなくても、わからないようにきちんと教育しよう。」とたくさんの療育やクリニックにかかっては、自分の考えにあうドクターを探しさまよっていました。今思えば、治すものでも隠すものでもないと、あの頃の私に言ってやりたい気
持ちですが、当時はそれしか自分にできることはないと信じきっていました。
クリニックに通い、療育に連れて行き、子どもが適切な振る舞いや行動ができることが、自分の安心感につながっていたのだと思います。(クリニックや療育を否定するものではありません)
小学校に上がり、情緒学級を選択してからは、本人の特性にあった、緩やかな学びと育ちができ、とても安定して過ごすことできました。ただ、小学3年生頃から、いわゆる反抗期の親への反発や、「周りと
自分との違い」に気がつくようになり、親子でよく衝突していたことが思い出されます。考えてみれば、どんな子にもそんな時期はあるのに、「“発達障害の”癇癪がひどくなった」と思い悩んでいたような気が
します。いちど「発達障害」と診断された私たちにとって、どんな些細なトラブルも、「障害ゆえ」として捉えがちで、「その子のありのまま」を見ることはとても難しくなっていました。辛いこと、どうにもならない悲しみや怒り、伝わらない気持ちを、どう消化していいかわからず思い悩む日もありましたが、親の会で誰かの話を聞いたり、自分の話を聞いてもらったりしながら、「自分だけじゃないんだな」と、なんとかやってこれました。親にとって、同じ境遇の保護者と話会える場があることは、本当にありがたかったです。。
そんな幼児期、学齢期を経て、今は中学2年生。実は小5から不登校を続けています。毎日楽しくゲーム三昧…不安じゃないといえば嘘になります。来年は受験生?!信じられません。ですが生きていれば、きっと道は開ける。その日まで、親の私はとにかく健康でいること。不登校の親の会、発達障害の親の会は、元気の源になり続けてくれています。
ところで、1年ほど前に『自閉症という知性』という本を読みました。(池上英子・著)
何名かの発達障害者のインタビューやレポートが載っている本なのですが、その中にひときわ私の心に刺さった言葉がありました。
「どうせ私のいうことは間違っている。だからどう思うべきか教えて」といった当事者の言葉です。実は、息子が全く同じことをいうことがありました。「僕はそう思わないけどさ、どう思うべきだったのか教えて。次からはそうするから」と。衝撃でした。
私が小さな頃から、「普通はこう思うものだよ」「普通はこう行動するべきだから」とたくさんの“普通”を教えてしまった結果だったのかもしれません。息子自身が思うこと(あるいはなんとも思わないこと)が、他人はそうじゃない…そして自分が感じている感情の方が間違っていて、多数派は「正」なのだという認識が、息子の中にはありました。きっとこの本の中で紹介されていた彼女にもあったのだと思います。無意識のうちに、息子自身が思う自然な感情を否定してしまってきたのではないかと、戻れるのなら、やり直したいことでいっぱいです。
最後になりますが、今私が気になっている「ニューロダイバーシティ」という概念をご紹介します。人はみな個性的で、多様だという考え方は、 脳神経科学的に証明・解明されてきています。発達障害に限らず、ある人の考え方が多数派とずれていたとしても、そこに優劣はありません。どちらが正しい、どう思うべき、ということから解放され、その人なりの育ち・学び・働き方、人生を歩むために、ぜひ多くの方に知っていただきたい考え方です。(詳しくは『ニューロダイバーシティの教科書』村中直人・著をご覧ください)
私は、この考え方を知ってから、多数派に合わせることだけが全てじゃないと思えるようになりました。さらに、ニューロダイバーシティの考え方は、広く企業・大学などに浸透し始めています。(近場だと、新松戸の流通経済大学の中に、ダイバーシティ共創センターという学生の多様性を支援する場所が設置されています。)
最近では、保育園でも学校でも、合理的配慮の理解がどんどん進んでいます。
人と同じような学び方でなくても、ゆっくりでも、その子のペースで歩んでいくことはスタンダードになっていますね。今困ったなぁと思っている特性も、強みになることだってあるかもしれません。保護者の皆様には、そんな希望を持って、でも無理せず自分ペースで歩んでほしいなと思います。
「あんだんて」は音楽用語で、“歩く速さで”という意味ですが、歩く速さは人それぞれ。
自分のペースでね、という思いで名付けました。10年経っても、その思いは変わらず、むしろ自信を持って伝えたいと思います。どうぞお子様のペースで、一歩いっぽ歩んでくださいね。もし、発達障害や不登校について何か困っている、漠然と不安がある、伴走者が欲しいと思っている方がおられましたら、一度おしゃべりしに来てください、お待ちしています。
お読みいただきありがとうございました。
あんだんて 代表 日置ひとみ